和歌山県営球場 向ノ芝&紀三井寺


和歌山県営球場といえば1965年に完成した紀三井寺運動公園の中にある紀三井寺球場だ。
球場はやや老朽化が進んでいるが緑豊かな公園は実に美しい。
(中央の道路はデンマーク通りというらしい)
両翼93m中堅120m
国道42号に面していて駐車場は無料なので車で行くのに適している。
電車の駅は遠い。バスは和歌山市駅などから出ているが500円ぐらいする。
かつてはパリーグの公式戦も開催されたことがある。
タイガースは南海とのオープン戦を行った事があるが、和歌山での2度の公式戦は紀三井寺が完成する前だった。
公式戦を行った球場が今はなき向ノ芝球場だ。
向ノ芝球場は1953年に建てられた。和歌山市内ではそれまで本格的な野球場がなく、和歌山中学のグラウンドなどを使用して高校野球予選を行っていた。
この球場はJR和歌山駅から北へ歩いて10分ほどの場所にあった。
ここでは高橋ユニオンズの春季キャンプを行ったこともある。
私がこの球場に興味を持ったのは青木一三氏の著書「プロ野球どいつもこいつも」を読んでからの事だった。
1955年、当時高校野球の大スターだった和歌山新宮高校の前岡勤也を何が何でも獲得するべく動いていた青木スカウトは前岡が登板する和歌山大会を全試合観戦しようと考えて向ノ芝球場へと出かけた。そこでついでに他の試合も見ていたことでまったく無名の藤本克巳ほか数人の選手を発掘した。投手としてはまったくダメだった藤本は入団後打撃で成長しタイガースの4番打者を勤めた。藤本克巳の入団ストーリーの舞台が向ノ芝球場だった。
(引用写真:国土地理院撮影の空中写真 和歌山1961年撮影)
現在は和歌山県立体育館などの施設が跡地に建設されている。
1963年に球場が閉鎖になり1964年に完成した体育館や1974年に完成した体力開発センター、向ノ芝公園などが跡地にある。
体育館は廃止後すぐに建設されたようだ。新設される紀三井寺運動公園に移管する予定で向ノ芝球場を1963年に廃止したのに紀三井寺球場の完成が遅れて1964年には和歌山県に県営球場がなかった。
この土地が川沿いなのだが盛土で平坦に整備されていることがわかる。すなわち野球場だったのだ。
近くにJRが走っている姿も球場から確認できる。
場所は紀三井寺よりはるかに便利なのに。


引用写真:国土地理院撮影の空中写真 和歌山1961年撮影

制定 2006.10.9

げんまつWEB タイガース歴史研究室